久しぶりに,このブログを見に来てくださっている方の検索語リストを眺めてみたら,ここのところのベース関連ネタ集中の結果か,その方面の検索語が増えていることがわかった.LaklandとかCrewsとか.そのなかで「順ぞり」「逆ぞり」という語でも4件ほど検索があったので,簡単に順ぞり・逆ぞりの説明をしてみたい.
・・・が,当方は20年くらいベースを弾いているだけのアマチュアであるからして,ビルダーの方とかリペアの方が見たら「うそだよ,そんなの」とかいうこともあるかもしれない.なのであくまで参考にしていただく程度に.
順ぞりとは:弦に引っ張られる方向にネックがしなった状態.割と一般的.一般に弦高はネック中間くらいで高くなっていて,弾きづらさを感じることがある.
逆反りとは:弦に引っ張られる反対の方向にネックが反った状態.通常は内部に仕込んであるトラスロッドの締めすぎとか,指板の膨張,あるいはネック/指板の材質が異なる場合に温度による収縮率の差の為起こることなどがある.
ガットギターなどネックにトラスロッドがないものも存在.
ねじれ:ネックの低音・高音で反り具合が異なってネックがねじれた状態.一部の楽器では複数のトラスロッドでねじれもある程度補正できるものもある.(リッケンバッカーとか多弦ベース)
波打ち:一様に起きるのではなく,指板上の複数箇所で順反りと逆反りなどが起こった状態.70年代後半のフェンダーを持っていると,これに結構泣かされる.
他には指板面の方向に曲がったりなどあるが,これは割愛.
演奏できる状態の楽器で判断する場合,指板面で見るケースと,フレットトップで見るケースの両方があるが,フェンダーとかの古めの楽器の場合,指板が反っていてもフレットを削ってなんとかしてあったり,なんとかできるケースもある.
ベースの場合はネック自体の重さが結構なものになるので,個人的なおすすめとしては,
1. テールを真下,ヘッドを真上にし,たった状態で上から見る
2. 演奏する状態,あるいは180度ネックを中心にして裏返した状態で見る
3. テール側から見るときは,ベースを演奏する状態にして見る
ことをおすすめする.ギターなんかでやるように,ボディをもって弦が張ってある側を上にすると,それだけで逆反り方向にいってしまうことがある>ベース
フレットトップが作る面はこれではわからないので,結局はチューニングした状態で1f/12fを抑えて5~7fあたりの状態をみる,とか.
一般に,であるが,通常弾く強さ・ポジションでピッキングして
1. どこでもびびらない→正常な状態か,弦高高すぎ
2. 1本の弦の低音側でびびるが高音側はびびらない→逆反り
3. 1本の弦の高音側でびびるが低音側はびびらない→順反り
4. どこでもびびる→弦高低すぎ,極端な場合,開放弦でチューニングできない.
5. 音が詰まる感じがする→弦高が低いか,タッチが強くて,そのセッティングで想定されていた弦のアクションの限度を超えているなど.
というケースに分類できると思う.4であっても,アンプを通したり,アンサンブルの中でわからなければ問題無しという考えもある.また某「ローアクション」を流行らせたブランドのオーナー氏が楽器フェアでそのベースを弾いているのを聞いたけれど,明かに音が詰まっていた.びびりは聞こえないが,音が詰まるのである.
2006年2月号のJAZZ LIFEに,アトリエZのビルダー MAS HINO氏が'63のジャズベをメンテ・調整する話が出ていたが,氏の標準セッティングは相当に低く,弦のアクションを小さく弾く「ローアクション」できっちり音を出すことが要求されているように思う.
さて,順反りの場合はトラスロッドを締めていく.通常は右回しで締める方向.
逆反りの場合は,弦の張力で引っ張ってもらえるようにロッドを緩める.
ここで注意なのは,回しすぎということである.
ネックの中には木材などがかなりがんばるものもあり,良くも悪くも「ロッドの効きが悪い」という状態が存在するためである.
私の手持ちだと昨年購入のアーニーボール製のMusicman Stingrayなどがこの部類.締めても,緩めても,半日くらい経ってみないと結果がわからなかった.
調整の順番は,大体は:
1. フレット面をほぼまっすぐにする.わずかな順反り(ほんとにわずか,弦がかろうじて付かない程度)が理想だと思う.その反りで出来た隙間の範囲内で弦が振動するわけ.
2. 弦を張り,チューニング後,好みの弦高に弦をセット.余談だが,弦高調整の際にイモネジのレンチ穴やねじ穴などつぶさないように.上げるときには,弦を緩めるというのも手.
3. その状態で音をだし,最初にチェックしたようにローポジ,ハイポジでビビリをチェック.全体的に出るなら,低すぎとか,タッチ強すぎ,などが原因.
ローポジのみで出るなら逆反りの可能性があり,若干ロッドを緩めてみる.
注意:ロッドは,どうやら,締める状態の方が安定するように思える.少し余計に緩めて,締める方向に戻すのが良いのではないか.
ハイポジのみであれば,順反りの上,サドルがちょっと低いと考えられる.
4. 上記を納得行くまで繰り返し.
Crewsなどこった作りのブリッジは,素人調整ではどうにもならないこともある.
また,特定のフレットだけビビるような時は,フレットのファイリング(削り)をやってもらう必要がある場合などもある.
強いタッチでネックより弾く人は,弱いタッチでブリッジ寄りを弾く人よりも弦の動き(アクション)が大きいので,弦高を落とすとビビリやすい.その辺を考えて調整する必要がある.
余談であるが,最近いじった中で,ロッドの効き具合が良く,調整がしやすいベースとしては '63のジャズベース,それからネックだけならばCrewsもOK(セパレートタイプのブリッジは弦高の他音質も相当に変わるので調整は難しい),それとESP製のLakland Shorelineシリーズ.オールドのフェンダーは大体効きが良いと思う.('58のプレベなども良く調整できた)
逆に反応が悪く,良い意味ではネックの木材が安定しているとも言えるが,調整に時間がかかる(放置してなじむまで待つ時間)のはEB Musicman Stingray.
機構的に問題があって,調整出来ない状態になってしまいがちなのはRickenbacker.これは稀に,木材部分を破壊してしまっている個体があるので,ビンテージを弾くつもりで購入する場合は,ネームプレートを外して,ロッドの状態をチェックすること.
新品の内はネックは安定しづらい(特に順反り方向に動きやすいと思うが)が,その他ネックの反りの原因となりそうな事項としては,私は下記を経験している
・温度差:たとえば,冬の夜,暖房が効いた室内で調整し,朝暖房が切れて冷えた状態で見るとロッドが縮んで逆反りになり,バズが増えている
・指板とネックの材の違いによる吸湿・膨張の違い:ローズやエボニー指板の場合,想像するよりも遙かに湿度による膨張の影響が出やすい.特にフレットレス指板でビビリ具合など弦高をぎりぎりまで調整している人は,指板面のコンディションと同じくらいに気を遣う方が良いと思う.
湿度に関し,冬場はできれば40~60%程度の湿度の場所に楽器をキープしておきたいもの.この湿度は人間にとっても快適な湿度なので加湿器などを買うと良いと思う.乾燥しきった状態から,上記湿度に持ち込んで楽器が安定するまで,自分の経験では約1週間ほどかかる.逆の場合も同様で,1~2日持ち出す程度であれば,周囲湿度の影響はそれほどないと思われる.(まれに楽器の広告で「アメリカでからからに乾燥して乾いた鳴りが・・・」なんて書いてあることもあるがアメリカだってそんな乾燥した場所だけではないし,そもそもビルダーが「45~55%が最適」と言っているのをご存じだろうか)
まぁあまりにぎりぎりのセッティングをする人は,楽器の保管環境などにも注意すべきというお話.いろんな場所で弾かなくてはならない人は,逆に極端なセッティングでは実用性が下がりかねない.できれば調整が楽で素直な楽器を持ち出すと良いのではないだろうか(ツアーする人など)
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